寄与分が認められるための要件
寄与分は、「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるとき」(民法904条の2第1項)に認められます。
そして、寄与行為が「特別の寄与」と認められる一般的な要件として、
- ① 行為の特別性
- ② 専従性
- ③ 無償性
などが挙げられます。
寄与分が認められた事例
寄与分が認められた事例の類型を整理すると、一般的に
などに分類されます。
① 家業従事型
福岡家小倉支審昭和56年6月18日では、被相続人の長男が「被相続人が死亡するまで通算して約二五年間に亘り被相続人と共に家業の精米販売、種物販売、パンの製造販売等の業務に従事してきたものであり、また最後まで被相続人と生活を共にして被相続人の世話をしたことは相続開始後も本件遺産の土地に居住している利益や昭和四七年ころからこの土地の大部分を有料駐車場にして経済的利益を得ていること等を考慮しても遺産の維持に貢献したものとして寄与は認めなければならない。」として、被相続人の長男に寄与分が認められています。そして、その寄与分は10パーセントと評価するのが相当であるとされています。
② 療養看護型
大阪家審平成19年2月26日では、「寄与分を認めるためには、当該行為がいわゆる専従性、無償性を満たし、一般的な親族間の扶養ないし協力義務を超える特別な寄与行為に当たると評価できることが必要である。」としたうえで、排泄介助(深夜も含む。)や失禁の後始末、入浴介助、転倒時の助け起こしなどの介護の大半を相続人Aが担っており、相続人Aが家事労働をこなしながらこれらの介護を行ったことからすると、その作業量、肉体的負担、所要時間を考慮して、共同相続人Aの生活の中心を被相続人の介護作業が占めたといっても過言ではないと推認できるとして専従性が認められています。
更に、被相続人が分担した毎月10万円の生活費は、その金額に照らし、食費その他の一般的な家計費に主として充てられたことに疑問はなく、介護に対する報酬としての側面は必ずしも大きくないといえるとして、無償性は否定されないとして、寄与分を認めることが可能であるとしています。
そして、寄与分の評価としては、遺産総額中の3.2%強である750万円と認めるとされています。
③ 出資型
大阪高決平成27年3月6日では、遺産である実家土地の取得にかかるローンの返済について、当時の被相続人の収入でローンを返済することは困難であった一方、このローンは相続人Aの夫B名義の預金口座から引き落としの方法でなされていることから、本件ローンはB又はAの資産を原資として返済されたものと推認され、Bの前記返済はAの意思に基づいてA一家の収入から支払われていたものとみることができるとして、Aには遺産である土地の購入に当たって700万円の寄与があったと認められています。
④ 扶養型
長野家審平成4年11月6日では、被相続人の両親(相続人は母のみ)は、その収入のほとんどを被相続人らとの生活費に費やしており、こうした援助が20年以上にわたりあったればこそ、本件遺産が形成されるに至ったとの側面も否定できず、相続人自身、被相続人の遺産形成に際して特別の寄与があったものと認めるのが相当であり、寄与分は、諸般の事情を総合して考慮すると、相続開始時における遺産の5パーセント弱、金額にして800万円と認めるのが相当である。
⑤ 財産管理型
大阪家審平成6年11月2日では、遺産不動産に係る訴訟の第一審で敗訴した後、被相続人の五女が証拠の収集に奔走し、控訴審において逆転勝訴の結果を得ることになった事案において、顕著な貢献があったことが認められるとしたうえで、今日の遺産の存在についてその功績を無視することはできないから、同人の右行為は、親族としての扶助義務の範囲を超え、かつ単なる精神的寄与以上のものであって、遺産の維持につき特別の寄与があったというべきであるとして、遺産の1割を寄与分として認めるのが相当であるとしています。
寄与分が認められるか否かについては事例によって結論は大きく異なり、専門的判断を必要とします。寄与分が認められるか分からなくて困っている、寄与分が認められるかについて弁護士の意見を聞きたいなどがありましたら、横浜綜合法律事務所の弁護士にご相談ください。横浜綜合法律事務所では、無料法律相談も実施しております。詳しくは無料法律相談のページをご覧ください。
寄与分とは
寄与分とは、被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした相続人がいるときに、寄与した相続人の受け取れる財産を増やすという制度です。
なお、相続人以外の親族が被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合は、特別寄与料(民法1050条1項)が認められる可能性があります。
民法904条の2第1項「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。」
民法
まとめ

上記に記載した事例からすると寄与分が認められるためには、相当期間及び相当程度の労力を提供した場合や相当程度の資金を提供した場合などそのハードルは決して低くはないと思われます。
ただ、事例によって結論は大きく異なり、寄与分が認められるか否かについては専門的判断を必要としますので、お困りの際には弁護士にご相談ください。横浜綜合法律事務所では、無料法律相談も実施しております。詳しくは無料法律相談のページをご覧ください。