まずは、相続手続の全体の流れと、相続でやることの概要を把握する
「相続の話は四十九日の法要が終わってから…」という言葉を耳にすることもあります。
しかしながら、相続は、被相続人が亡くなったそのときから開始されます。相続に関する手続の中には、期限が定められているものもあるため、四十九日の法要が終わるまで相続に関する手続の準備を何も進めないというのは現実的ではありません。
被相続人が亡くなった後、スムーズに相続手続を進めるためには、相続手続の全体の流れと相続でやるべきことの概要を、事前に把握しておくことが重要です。
相続手続の全体の流れと、相続でやることの概要は、次のとおりとなります。
- 1. 遺言があるかどうかの確認
- 2. 相続人の調査
- 3. 相続財産の調査
- 4. 相続方法の決定(3か月以内)
- 5. 遺産分割協議
- 6. 相続税の申告(10か月以内)
- 7. 遺産分割の実行
当事務所では、初回無料法律相談(平日のみ、1時間以内)を行っておりますので、相続手続全般に関するお悩みや不明な点がありましたら、お気軽にご相談ください。ご依頼いただければ、相続手続の最初から最後までサポートすることができます。
1. 遺言があるかどうかの確認
遺言がある場合
被相続人が遺言を残しており、その有効性に問題がない場合、相続財産は遺言に則って分けられることになります。この場合、法律が定める相続人以外の者に対して、財産が分けられることもあります(これを遺贈といいます。)。
遺言がない場合
遺言がない場合は、法律上、相続人となれるのは一定の親族と決められていますので、誰が相続人になるかを調査する必要があります。
被相続人の遺言が有るか無いかによって、相続に関する手続が大きく異なってくる可能性がありますので、被相続人がお亡くなりになられたら、まずは「遺言があるかどうかの確認」をすることが重要です。
被相続人のご自宅内を探しても見つからない場合には、
- 銀行の貸金庫
- 公証役場
- 法務局
などに遺言が保管されていないかも確認しましょう。
遺言がどのような形式で作成・保管されているか(公正証書、自筆証書、秘密証書のいずれで作成されているか、自筆証書遺言の場合は法務局の保管制度を利用しているか。)により、裁判所での検認の手続が必要となるかどうかが変わってきます。そのため、被相続人が遺言を残しているかどうかを確認し、ご自宅や銀行の貸金庫などで遺言が見つかった場合は、開封することなく、まずはご相談いただければと思います。
なお、自宅や銀行の貸金庫などで見つかった封印がある遺言書の場合、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立ち会いがなければ開封することができない(民法1004条3項)とされており、仮に家庭裁判所外で開封してしまうと5万円以下の過料に処される可能性がある(民法1005条)ので、ご注意ください。
なお、被相続人の遺言があったとしても、遺言が無効となる場合もあります。例えば、
- 遺言が民法所定の方式に従って作成されていない場合
- 遺言書の内容が不明確な場合
- 遺言者に遺言能力がなかった場合
- 遺言書の内容が公序良俗に反している場合
などです。
ですので、遺言が見つかった場合には、その遺言の有効性についても検討する必要があります。
当事務所では、初回無料法律相談(平日のみ、1時間以内)を行っておりますので、亡くなられた被相続人の遺言に関してお悩みや不明な点がありましたら、お気軽にご相談ください。ご依頼いただければ、相続手続の最初から最後までサポートすることができます。
2. 相続人の調査
誰が相続人となるのかについては、民法に定められています。まず、被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人となります。その他の親族については優先順位が定められており、次の順序に従って相続人となります。
- 第1順位:子
- 第2順位:直系尊属(父母、祖父母)
- 第3順位:兄弟姉妹
これらの相続人のことを法定相続人といいます。
相続人の調査では、被相続人の戸籍をさかのぼって調査して相続人を確定することが必要です。具体的には、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本を取り寄せて、その記載内容を一つ一つ確認していきます。
その調査により、例えば、
- 被相続人が生前に養子縁組していた子
- 被相続人の前妻との間の子
- 更には、被相続人が生前に認知していた子
など、全く把握できていなかった他の法定相続人が見つかる可能性もあります。
ちなみに、遺産分割協議には法定相続人の全員が参加する必要があり、法定相続人の一部を欠いたまま遺産分割協議をしてしまいますと、その協議は無効となり、遺産分割協議を最初からやり直さなければならなくなってしまいますので、注意が必要です。
ですので、遺産分割協議前の相続人の調査をしっかりと行うことは、とても重要です。
当事務所では、初回無料法律相談(平日のみ、1時間以内)を行っておりますので、相続人の調査に関するお悩みや不明な点がありましたら、お気軽にご相談ください。ご依頼いただければ、相続手続の最初から最後までサポートすることができます。
3. 相続財産の調査
相続財産とは、被相続人がお亡くなりになったとき(相続開始時)に所有していた財産をいいます。相続財産には、不動産、自動車、預貯金といったプラスの価値を有する財産だけではなく、銀行や消費者金融からの借入金、交通事故の加害者としての損害賠償義務といったマイナスの価値を有する財産も含まれます。そこで、被相続人の相続財産としてどのようなものがあるかを調査する必要があります。
ちなみに、相続では承継されない財産もあります。例えば、仏壇や仏具、墓石や墓地などの祭祀財産は相続の対象とはなりません。
プラスの財産 | 不動産、自動車、預貯金など |
---|---|
マイナスの財産 | 銀行や消費者金融からの借入金、交通事故の加害者としての損害賠償義務など |
相続財産の調査の結果、マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合は、一般的には、相続放棄を検討することになるでしょう。
相続財産の調査にもれがあって、遺産相続の手続が一通り終わった後に、新たな遺産を発見することとなったような場合、その新たな遺産を誰が取得するのかをめぐって相続人間でトラブルが発生する可能性があります。また、その新たに発見されることとなった財産が、プラスの財産ではなくマイナスの財産だったような場合には、そのマイナスの財産の内容次第では、もしかすると大変なことになってしまうかもしれません。
ですので、遺産分割協議前の相続財産の調査をしっかりと行うことも、とても重要です。
相続財産の調査の方法は、相続財産の種類ごとに異なりますが、例えば、不動産であれば登記簿謄本、預貯金であれば通帳や残高証明書、銀行や消費者金融からの借入金であれば返済予定表や残高証明書などから特定していくことになりますし、手元資料だけでは不十分である場合は、関係機関に対して必要書類の発行を依頼することになります。また、相続開始後に届いた被相続人宛の郵便物から相続財産が判明することもあります。これらの調査を行い、相続財産を確定していくことになります。
財産の種類 | 資料例 |
---|---|
不動産 | 登記簿謄本 |
預貯金 | 通帳や残高証明書 |
銀行や消費者金融からの借入金 | 返済予定表や残高証明書 |
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4. 相続方法の決定(3か月以内)
被相続人が生前に多額の借金を背負って亡くなられた場合など、その具体的な遺産の内容によっては、「相続財産を引き継ぎたくない」と相続人が考えることもあるでしょう。
相続の方法については、民法で、次の3つの方法が定められています。
単純承認 | プラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継ぐ |
---|---|
相続放棄 | プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がない |
限定承認 | 相続人が承継する財産の範囲内でマイナスの財産を負担する |
相続人は、プラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継ぐ「単純承認」、プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がない「相続放棄」、相続人が承継する財産の範囲内でマイナスの財産を負担する「限定承認」の三つの方法から、いずれかを選択することになります。
この選択には期限が設けられており、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、「相続放棄」や「限定承認」をしなければ、「単純承認」したとみなされます。また、相続財産を処分した場合も、「単純承認」したとみなされます。いったん単純承認すると、これを撤回することはできません。
例えば、被相続人が負っていた多額の負債から免れたい場合や、親族間の相続紛争から解放されたい場合などには、「相続放棄」するかどうかを検討することになるでしょう。この「相続放棄」をするためには、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所で相続放棄の申述をする必要があります。
他方で、被相続人に負債があるものの、どれくらいの負債総額なのかが不確かである場合など、マイナスの財産がプラスの財産を上回るかどうかが不明な場合には、「限定承認」をするかどうかも検討することとなります。ちなみに、「限定承認」は、相続人全員で手続を行う必要があり、相続人全員の足並みが揃わない場合にはこの手続を進めることはできません。
「単純承認」、「相続放棄」、「限定承認」のいずれとするかを決定するには、相続財産の詳細が分からないと判断に悩むことも多くあります。相続財産の調査のためには、関係機関への照会や不動産の価値の査定が必要になることも珍しくありませんので、可能な限り早くから、相続財産の調査に着手する必要があります。
当事務所では、初回無料法律相談(平日のみ、1時間以内)を行っておりますので、「単純承認」、「相続放棄」、「限定承認」のいずれの方法を採るべきかなどについてお悩みや不明な点がありましたら、お気軽にご相談ください。ご依頼いただければ、相続手続の最初から最後までサポートすることができます。
5. 遺産分割協議
相続財産を分けるためには、相続人全員で遺産分割協議をして、遺産分割協議書を作成する必要があります。例えば、不動産の名義を変更したり、預貯金を解約したりするためには、相続人全員が署名捺印した遺産分割協議書を作成し、これに基づいて手続を行うことが一般的です。
なお、遺産分割協議はそれ自体に期限はありません。もっとも、相続開始から10年が経過してしまうと、特別受益や寄与分の主張ができなくなってしまうので、注意が必要です。また、相続税申告との関係では、可能であれば、被相続人が亡くなってから10か月以内に完了しておくことが望ましいです。
遺産分割協議は、相続人の一部を欠いて行われた場合には、無効となってしまいますので、注意が必要です。もっとも、必ずしも相続人の全員が一堂に会して話し合いが行われる必要はありません。
裁判所を介さない相続人間での遺産分割協議が整わない場合は、家庭裁判所での遺産分割調停手続を利用することになります。
遺産分割調停手続は、簡単に説明しますと、家庭裁判所が選任する中立公平な調停委員と裁判官が当事者の遺産分割の話し合いに関与してくれる手続であり、あくまでも「話し合い」が基本となっています。もっとも、裁判所から専門的な知見に基づく中立公平な調停案(解決案)が当事者に示されることもよくあります。
遺産分割調停手続での話し合いでも解決に至らない場合は、家庭裁判所の遺産分割審判手続により、裁判所の判断を仰ぐことになります。
この審判手続では、当事者がそれまで主張したすべての事情を総合考慮して、裁判官が遺産分割の方法を決定します。
認知症などで判断能力が不十分な相続人がいる場合、その代理人の手続参加が必要となります。通常は成年後見人が代理人として参加しますが、被後見人と一緒にその成年後見人も同じ相続人となっているような場合には代理人となることができず、家庭裁判所にて特別代理人を選任してもらう必要があります。
また、相続人の中に未成年者がいる場合にも、その代理人の手続参加が必要となります。通常は親権者が未成年者の代理人として参加しますが、未成年者と一緒にその親権者も同じ相続人となっているような場合には代理人となることができず、家庭裁判所にて特別代理人を選任してもらう必要があります。
更に、相続人の中に行方不明の相続人がいる場合には、遺産分割協議を進めるためには家庭裁判所にて不在者財産管理人を選任してもらう必要があります。
当事務所では、初回無料法律相談(平日のみ、1時間以内)を行っておりますので、遺産分割協議、遺産分割調停手続、遺産分割審判手続に関してお悩みや不明な点がありましたら、お気軽にご相談ください。ご依頼いただければ、相続手続の最初から最後までサポートすることができます。
6. 相続税の申告(10か月以内)
相続税の申告と納税は、遺産に係る基礎控除額を超える場合に必要となります。
相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。例えば、被相続人が1月15日に死亡し、その日のうちに知った場合、その年の11月15日が相続税の申告期限になります。相続税の申告書の提出先は、被相続人の住所地を所轄する税務署です。
遺言があるかどうかの確認、相続人の調査、相続財産の調査、遺産分割協議の各手続の中で特段問題が生じることなくスムーズに進み、遺産分割協議まで完了した場合、各自が取得した相続財産の内容に沿って、10か月以内に相続税の申告を行うことになります。
10か月以内に遺産分割が完了しない場合
これに対して、例えば、相続人を調査した結果、これまでに連絡を取ったことのない相続人がいることが判明し、その後もなかなか連絡がつかずに遺産分割協議を行うことができない場合や、遺産分割協議を開始したものの、相続人間の意向が対立しており、遺産分割協議が整わない場合などでは、10か月以内に遺産分割が完了しないことも珍しくありません。この場合は、遺産分割が未了である状態でいったん相続税の申告をした上で、遺産分割完了後に改めて更正の請求または修正申告をすることになります。
7. 遺産分割の実行
遺産分割協議、調停、審判などにより遺産分割の方法が確定したら、その確定した内容に従って、実際に遺産を取得する相続人にその遺産を引き渡したり、名義を変更したりします。
例えば、不動産については、法務局で相続登記の手続を行って名義を変更します。預貯金については、金融機関で解約・払戻や名義変更の手続を行います。
なお、不動産の相続登記は、2024年4月から義務化されており、相続人は不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記の手続を行う必要があって、正当な理由なく相続登記申請を怠った場合、10万円以下の過料に処される可能性があります。
遺産分割協議で不動産を取得した場合も、別途、遺産分割から3年以内に、遺産分割の内容に応じた登記をする必要があります。
ちなみに、遺産分割の協議に時間がかかり、3年以内に相続登記が間に合わない場合には、「相続人申告登記」という制度を利用することが可能です。この「相続人申告登記」は、相続登記の義務を履行するための簡易な方法として新設された制度で、各相続人は単独で相続人申告登記の申請ができます。ただし、遺産分割がされた後にこれに基づく登記をする義務を相続人申告登記によって履行することはできません。また、相続人申告登記は、不動産についての権利義務を公示するものではないため、相続による不動産所有権の取得を確実なものとするためには、正式な相続登記(所有権移転登記)を申請する必要があります。
相続手続の最初から最後までサポートすることができます
当事務所にご相談頂いた場合、遺言の検認手続、相続人の調査、相続財産の調査、遺産分割協議のすべての段階でご協力することが可能です。また、相続人間に意向の対立があるケースでも、ご相談者の代理人として、他の相続人との協議・調停・審判の各手続に臨むこともできます。また、相続税の申告についても、遺産分割協議のご依頼を頂き、無事に遺産分割が完了した場合、当事務所から税理士をご紹介することも致します。
当事務所では、相続手続の最初から最後までサポートすることができますので、相続手続に関するお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
遺産整理・遺産相続に関して、当事務所の弁護士に初めてご相談される方は、無料法律相談(平日のみ、1時間以内)を実施しております。詳しくは無料法律相談をご覧ください。