死亡時に、孫に財産を承継させる方法
孫は、原則的に法定相続人とはならないため(相続発生時に子が死亡している場合などには、代襲相続が発生し、孫が相続人となります)、死亡時に、孫に財産を承継させるためには、以下のいずれかの方法が必要となります。
① 遺言によって、孫に財産を承継させる(遺贈)
遺言書を作成すれば、孫に、包括的に財産を承継させたり、特定の財産を承継させたりすることが可能です。
財産の全部または一部を包括的に遺贈する場合には、受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するため、相続人と同等に扱われることとなります。
② 孫と養子縁組をする
法定相続人である「子」には養子も含まれます。
そこで、孫と養子縁組をすれば、孫が「子」として法定相続人となるため、孫に財産を相続させることが可能です。
生前に、孫に財産を残す方法
なお、以下のような方法で孫に贈与をすることで、生前に、孫に財産を残す方法もあります。
① 暦年贈与
年間(1月1日から12月31日まで)110万円までの贈与であれば、孫への贈与にも贈与税が課税されません。
ただし、亡くなる前7年間の一定の贈与については、相続税の算定において相続財産に加算されますので、注意が必要です。
② 教育資金贈与
孫が30歳未満かつ孫の合計所得が1000万円以下であれば(これらの条件を満たせば、子に対しても可能です)、最大1500万円まで教育資金として非課税の贈与をすることができます。
孫に財産を承継させるメリット
孫に財産を承継させるメリットとして、以下のことが挙げられます。
① 祖父母の意思に沿った財産の承継ができる
孫に財産を承継させることで、例えば、孫を自分が経営している事業の後継者にしたいと考えている場合に、事業に関連する設備、資産などを孫に承継させることも可能です。
また、孫に財産を承継させることで、孫の教育資金や生活資金を確保することもできます。
このように、孫に財産を承継させることで、祖父母の意思に沿った財産の承継を実現することが可能です。
② 相続税を抑えられる可能性がある
本来、自分から子、子から孫と相続する場合には、相続が2回発生するため、相続の度に相続税が発生しますが、直接自分から孫に財産を承継させる場合、相続税の発生は1回で済みます。
そのため、トータルで見たとき、発生する相続税額を抑えられる可能性があります。
孫に財産を承継させるデメリット
孫に財産を承継させるデメリットとして、以下のことが挙げられます。
① 相続税額が20%加算となる
遺贈によって孫が財産を承継した場合や養子縁組をして孫が相続人となった場合には、被相続人の配偶者、父母、実子が相続した場合と比較して、相続税額が20%加算されます。
ですので、相続税の負担を考えた場合、自分から子、子から孫と相続させるのか、それとも、直接自分から孫に財産を承継させるのかは、トータルでかかる相続税額を試算し、慎重に判断する必要があります。
② 親族間で紛争が発生する可能性がある
本来、法定相続人ではない孫が財産を承継することととなった場合、他の法定相続人の相続分が減少するため、親族間で相続を巡る紛争が発生する可能性があります。
また、孫への財産承継の内容によっては、他の法定相続人の遺留分を侵害することがあり、この場合、孫が他の法定相続人から遺留分侵害額請求をされてしまうこともあります。