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相続の場面において、被相続人の生前、死後を問わず、様々な口約束がなされることがあります。このコラムでは、簡単な例を用いて、下記のような口約束は有効か、また、どうすれば約束内容を実現できるのかについて、解説します。

被相続人の生前に「あなたに、甲土地をあげる」と言われた場合(生前贈与)

被相続人の生前に「あなたに、甲土地をあげる」と言われた場合、これは生前贈与に当たります。贈与契約は諾成契約ですので、口頭でも有効に成立します(民法549条、以下法令名省略)。しかし、書面によらない贈与は、履行がされた部分をのぞき、各当事者がいつでも解除することができます(550条)。また、不動産の所有権移転については、登記がなければ第三者に対抗できません(177条)。所有権移転登記を申請するためには、登記原因証明情報を提供しなければならないところ(不動産登記法61条)、生前贈与においては贈与契約書が通常必要とされています。そのため、口頭で、「あなたに、甲土地をあげる」と言われ、それを実現したい場合には、書面で贈与契約書を作成の上、所有権移転登記手続をすることが推奨されます

被相続人の生前に「私が死んだら、あなたに甲土地をあげる」と言われた場合

遺贈

被相続人の生前に「私が死んだら、あなたに甲土地をあげる」と言われた場合、これは遺贈にあたるのでしょうか。遺贈とは、遺言によって財産を受遺者に無償で与える行為を指します(964条、負担付遺贈を除く)。遺言により、特定人に対して不動産を遺贈する旨が定められている場合、遺言者の死亡により遺言の効力が生じると同時に、その不動産の所有権は受遺者に移転することになります。

しかし、遺贈は遺言による必要がありますが、遺言は要式行為(960条)であるため、原則口頭で行うことはできません。そのため、「私が死んだら、あなたに甲土地をあげる」と口頭で言われても、それのみで遺贈とは認められず、法律に定められた方式に従って遺言書を作成する必要があります

遺言の方式としては、

の遺言があります。

① 自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者が遺言の全文、日付および氏名を自署し、押印して作成する遺言です(968条)。一番簡単に作成できる遺言ですが、紛失の可能性がありますし、遺言者が死亡した後、家庭裁判所での検認手続きが必要となります(1004条1項)。

② 公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証人に作成してもらう遺言です。証人2人以上が立会い、公証人の面前で、遺言の内容を口頭で説明し、それに基づいて、公証人がこれを筆記して読み聞かせ、文章の内容が正確なことを確認して作成されます(969条)。こちらは、原本が公証役場に保管されますので、紛失や偽造の心配がありませんし、家庭裁判所での検認手続きも不要です(1004条2項)。

③ 秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言の内容を秘密にするための遺言の方法です。遺言者が、遺言の内容を記載した書面(自筆証書遺言と異なり自書である必要はありません。)に署名押印をした上で、これを封じ、遺言書に押印した印章と同じ印章で封印した上、公証人及び証人2人の前にその封書を提出し、自己の遺言書である旨及びその筆者の氏名及び住所を申述し、公証人が、その封紙上に日付及び遺言者の申述を記載した後、遺言者及び証人2人と共にその封紙に署名押印することにより作成されるものです(970条)。遺言の内容を誰にも明らかにせず秘密にすることができます。また、自筆証書遺言と同じように、この遺言書を発見した人が、家庭裁判所に届け出て、検認手続を受ける必要があります(1004条1項)。

④ 特別方式の遺言

特別方式の遺言とは、死亡の危急に迫ったことや、一般社会と隔絶された地(船舶遭難者など)にある場合という特別の事情により普通方式の遺言をすることが困難な場合に許された簡易・略式な遺言ですが、各場面に応じた厳格な要件を満たす必要がありますし(976条~979条)、遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から6ヶ月間生存するときは、無効となります(983条)。

死因贈与

被相続人の生前に「私が死んだら、あなたに甲土地をあげる」と口頭で言われた場合、死因贈与(554条)にあたる可能性もあります。死因贈与とは、被相続人の死亡を原因として、他人に財産を贈与する内容の契約です。遺言者の一方的な意思表示である遺贈と異なり、財産を贈与される側との双方の合意による契約となります。また、死因贈与は、「その性質に反しない限り」、遺贈に関する規定が準用されますが(554条)、遺言の方式(960条、967条以下)に関する規定は準用されないため、死因贈与は口頭でも有効に成立します

しかし、他の相続人と争いになった場合には、死因贈与があった旨の証明が必要になります。具体的には、相続人全員に死因贈与の存在を認めてもらうか、死因贈与契約書等の客観的資料を提出する必要があります。死因贈与の存在につき相続人全員が認めないことは十分にあり得るため、死因贈与を実現したい場合には、死因贈与契約書を公正証書等の書面で作成することが推奨されます

相続開始前に、推定相続人間で、「被相続人が亡くなったら、甲土地はあなたが相続してね」と口頭で合意した場合

遺産分割協議について

被相続人の死亡と同時に、相続財産(不動産や預貯金債権など)は相続人の共有状態となります(898条1項)。共有状態は、遺産分割が終了するまで続きます(909条)。遺産分割は、被相続人の遺言による遺産分割方法の指定(908条)、遺産分割協議(907条1項)、家庭裁判所の調停(家事事件手続法244条・274条1項)や家庭裁判所の審判(907条2項)などによってなされます。

相続開始前の遺産分割についての合意について

では、相続開始前に、推定相続人間で、「被相続人が亡くなったら、甲土地はあなたが相続してね」と口頭で合意した場合、その効力はどうなるのでしょうか。

上記のような合意は、遺産分割についての合意であると考えられます。相続財産及び相続人の範囲は、相続の開始、すなわち被相続人の死亡により初めて確定します(882条)。遺産分割は、相続財産を各相続人に分割する手続きであるため、相続開始前における各推定相続人の合意による遺産分割協議は無効となります。したがって、推定相続人間で、「被相続人が亡くなったら、甲土地はあなたが相続してね」と口頭で合意した場合、当該合意は無効となります。書面による合意も同様に無効です。

相続開始後に、相続人間で、「甲土地はあなたが相続してね」と口頭で合意した場合

上記合意は、遺産分割協議おける合意であると考えられます。遺産分割協議自体は、口頭の合意でも有効となります。しかし、相続人間で協議内容を守らない人がいた場合には、裁判で解決を図ることがあります。その場合には遺産の分割を請求する側が、遺産分割協議の内容を証明する必要があり、書面がなければその証明は困難となる可能性が高くなります。また、実務上、金融機関における預貯金口座の名義変更や、法務局における不動産の名義変更等においても、遺産分割協議書の提出が求められます。事後の紛争を予防し、協議内容通りの遺産相続を実現するために、書面で遺産分割協議書を作成しておくことが推奨されます

まとめ

口頭による遺言や遺贈は原則としてできません。また、口頭による生前贈与、死因贈与、遺産分割協議は理論上可能ですが、事後のトラブル防止や、名義変更手続きのためには書面化が必須となります。相続について口頭で伝えられた内容や、あなたの立場によって、何が適切な書面であるかも変わってきますので、詳しくは相続に詳しい弁護士にご相談ください

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