名義人が死亡した銀行口座は、原則として、相続手続が終わり、凍結解除の手続を行うまでは、預金を引き出すことはできません。
しかしながら、葬儀費用の支払いや各相続人の当面の生活費の支払いのためなどでお金が必要となった場合には、遺産分割前であっても、被相続人の銀行口座から預金を引き出すことができる制度があり、これを預貯金の仮払い制度と言います。
預貯金の仮払い制度には、引き出したい金額によって、金融機関での直接の手続が可能な場合(民法第909条の2)と、家庭裁判所での手続が必要となる場合(家事事件手続法第200条第3項)があります。
引き出す金額が、相続開始時の預貯金額×1/3×法定相続人の法定相続分(ただし、1つの金融機関について引き出せる上限額は150万円)までであれば、金融機関での直接の手続が可能です。
上記の金額を超える場合には、家庭裁判所での手続(仮処分の申し立て)が必要となります。
家庭裁判所での手続をとるためには、遺産分割の調停または審判の申し立てを行うことが必要であり、家庭裁判所が、仮払いの必要性を認めると、他の共同相続人の利益を侵害しない範囲内で仮払いが認められます。
この場合、金額の上限はありませんが、裁判所での手続となりますので、仮払いが認められるまでに、費用と時間がかかります。