弁護士事務所がお手伝いできる手続 | ||
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相続発生 | 死亡届の提出 | |
公的年金・健康保険の手続 | ||
公共料金等の引落し口座の変更等 | ||
① 相続人の確定・戸籍謄本等の取得 | ||
② 遺言書の有無の確認 ※ 遺言の種類によって手続きが異なる |
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③ 相続財産の調査、把握 | ||
相続開始を知った日の翌日から3カ月以内 | ④ 相続放棄・限定承認・単純承認の選択 ※ 決められない場合は、熟慮期間延長の手続を家庭裁判所にて行う。 ※ 相続放棄・限定承認は家庭裁判所にて行う。 |
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相続開始を知った日の翌日から4カ月以内 | 被相続人の所得税の申告・納付(準確定申告) | |
⑤ 遺産分割協議、遺産分割協議書の作成(遺言書のない場合) ※ 分割協議の際の特別代理人等の選任(家庭裁判所) ※ 相続人が未成年の場合などに必要となります。 |
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⑥ 遺産分割調停・審判(協議が整わない場合) | ||
⑦ 遺言書、遺産分割協議書、遺産分割調停調書に従った名義変更等
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発生後10か月以内 | 相続税申告書の作成 | |
相続税の申告・納付 |
① 相続人の確定・戸籍謄本等の取得
相続関係のスタートは、誰が相続人かを確定することです(詳細は「相続人の確定(順位と相続割合を解説)」をご参照ください)。
相続人の確定は、不動産の登記名義を変更する、銀行口座を解約するなど全ての場面で必要となります。
誰が相続人であるかについては、民法で決められています。
夫が亡くなった時の相続人は、妻と子どもであり、明白では?思われるかもしれませんが、故人が再婚されていたり、相続人となるはずであったお子さんが故人よりも先に亡くなっていたりすると複雑になってきます。戸籍を取り寄せて、初めて相続人には外に子供がいたことが判明することもめずらしくありません。特に兄弟姉妹が相続人となるケースでは、相続人の数が何人にもなり、連絡がつかない人もいる・・・ということもあり得ます。相続人を確定させて、全ての相続人と連絡を取って、相続手続きについての了解を得ないと手続きを進めることができません。
相続人を確定させるために必要なのは、市役所、区役所等で取得する「戸籍」です。
- 亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍
- 子どもの有無、人数を確定します。認知した子、妻とは離婚したが妻の連れ子との間の養子縁組が残っていた等、様々なケースがあります。
- 相続人全員の現在戸籍
- 相続人となるはずだった方が亡くなっている場合は、代襲相続(本来相続人となる者が死亡している場合に、その子どもが代わりに遺産を相続する制度)を考えます。
- 亡くなった方に子どもがいない場合は、故人の両親の出生から死亡までの戸籍
- 兄弟姉妹がいないかどうか(半血兄弟姉妹を含む。)
※ 半血兄弟姉妹とは、父親又は母親のみが共通な兄弟姉妹のことです。
※ 出生から死亡まですべての戸籍謄本が必要です。遠方の場合は郵送でやりとりをすることになり、取得に時間がかかることがあります。
次のようなケースは特に時間がかかります。
- 本籍地を異動しており、複数の市役所での取得が必要。
- 子どもがおらず、故人の両親の出生から死亡までの戸籍も取得が必要。
- 代襲相続が発生しており、本来相続人となるはずだった方の出生から死亡までの戸籍、代襲相続人の現在戸籍も取得が必要。
② 遺言書の有無の確認
遺言書がある場合とない場合で、この後の手続きがことなりますので、故人が遺言書を残しているか否かについて、確認します。
遺言書にはいくつかの種類があり、なかでも代表的なものが「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。
- 自筆証書遺言
- 遺言者自身が自筆で作成した遺言。 遺言者が亡くなられたときは、遺言を執行する(遺言書通りに相続手続きをする)前に、遺言書を家庭裁判所に提出して検認の手続きをする必要があります。
自筆証書遺言書保管制度を利用して、法務局に自筆証書遺言が預けられている場合は、家庭裁判所の検認は不要です。法務局に遺言書の閲覧請求をします。 - 公正証書遺言
- 遺言者が、公証役場で公証人に作成してもらった遺言。 公正証書は、家庭裁判所での検認手続きは必要ありません。公証役場に遺言書の閲覧請求をします。
③ 相続財産の調査、把握
次に、「相続財産の調査、把握」を行います。
相続財産の調査については、主に次のような方法があります。
- 不動産
- 市役所、区役所から固定資産税評価証明書を取得する
- 金融機関の通帳
- 残高の確認の他、証券会社の引落し、保険会社からの引落しがないか、他口座への送金がないか等、財産を探索する手掛かりにもなる。
- 郵便物
- 証券会社からの運用報告書、保険会社からの手紙等を調査する。
- クレジットカードの請求書
- 引落し金融機関名等で金融機関の把握漏れがないか確認する。
また、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(金融機関や消費者金融からの督促状、納税通知書)も確認します。場合によっては、④の相続放棄等を検討する必要が生じます。
④ 相続放棄・限定承認・単純承認の選択
相続放棄や限定承認を行う場合には、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所で手続きを行う必要があります。
- 相続放棄
- 相続人が被相続人のプラスの財産やマイナスの財産を一切引き継がないもの。相続放棄がなされると、他の相続人の相続分は、放棄者が初めからいなかったものとして算定されます。配偶者や子どもが相続放棄をしたことで、いつの間にか兄弟姉妹が相続人となることがあります。故人の死亡から3カ月以上経過していたとしても、「相続開始を知った日から3カ月以内」であれば相続放棄は可能ですので、慌てず、弁護士等にご相談ください。
- 限定承認
- 被相続人の債務がどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もある場合等に、相続人が相続によって得たプラスの財産の限度で被相続人のマイナスの財産の負担を引き継ぐ。
- 単純承認
- 相続人が被相続人のプラスの財産やマイナスの財産の権利義務をすべて引き継ぐもの。相続放棄や限定承認を行わなかった場合には、単純承認をしたものとみなされる(単純承認には、特別な手続きは不要)。
- ※ 法廷単純承認
- 相続放棄、限定承認ができる期間を過ぎた場合、遺産を処分(売却する等)した場合など一定の場合に単純承認をしたとみなされます。この場合は、改めて相続放棄等をすることはできません。
⑤ 遺産分割協議の実施(遺言書のない場合)
相続財産の調査、把握をした後、遺言書がある場合は遺言書どおりに遺産を分割し、遺言書がない場合は、相続人間で遺産分割について協議をします(相続人全員が合意すれば遺言書と異なる遺産分割協議も可能。)。遺産分割協議とは、財産の分け方についての話し合いのことです。相続人全員で、故人の財産をどのように引き継ぐかを話し合います。
※ 分割協議の際の特別代理人等の選任
未成年者とその親がともに相続人になる場合等には、未成年者に特別代理人を選任する必要があります(家庭裁判所に申立)。
遺産分割協議書の作成(遺言書のない場合)
遺産分割協議の結果を、「遺産分割協議書」という書面にします。
不動産の相続登記や、銀行口座の解約、相続税の申告の際には、この遺産分割協議書が必要になります。遺産分割協議書には相続人全員の署名・押印(実印)が必要です。
⑥ 遺産分割調停・審判
遺産分割協議に争いがある場合、相続人を代理して協議ができるのは弁護士のみです。さらに話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて、裁判所で話し合いを行うことがありますが、これらの申立てや調整への出席を相続人の代理人として行えるのも弁護士のみとなります。話し合いがまとまれば、合意内容に沿った調停調書が作成されます。
⑦ 遺言書、遺産分割協議書、遺産分割調停調書に従った名義変更等
預貯金・有価証券等の解約や名義変更
遺産分割の内容が確定したら、取引のあった銀行や証券会社等の取引について、解約や名義変更の手続きを行います。金融機関ごとに手続書類(相続手続依頼書)が異なります。銀行等は、遺産分割協議書があったとしても、手続書類に相続人全員の署名と押印を要求する場合があります。
不動産の相続登記
不動産の相続登記は、不動産の所在地を管轄している法務局で行います。当事務所に遺産分割協議をご依頼された場合には、相続登記については、司法書士をご紹介します。
※ 相続税申告書の作成、相続税の申告・納付
相続財産が一定額を超えるようであれば、相続税の申告、納付手続きが必要になります。
この手続きは相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。
遺産分割協議が整わない場合は、一旦法定相続の割合で申告をし、後日遺産分割協議が整った際に修正申告を行います。これらの手続きは通常は税理士に依頼をします。
相続手続きを弁護士に依頼するメリット
相続手続きは、上記のとおり、複雑かつ煩雑になります。必要書類の取得や金融機関等での手続きは、平日に行う必要があり、お仕事等で多忙な方、御高齢の方には大変な負担となります。さらに、相続人が多く連絡や調整が煩瑣であったり、相続人間で意見が合わない場合は、相続人の方だけでは解決の糸口が見えてこないこともあります。
相続関係業務について、銀行、司法書士等が「遺産整理業務サービス」等を提供していることがありますが、それぞれ費用や行える業務の範囲が異なります。
弁護士に依頼するメリットは、
- ① 争いのある遺産分割協議も含めてすべての業務をワンストップで行うことができること(登記及び相続税の申告については別途専門家をご紹介します。)。
- ② 法律の専門家であり、相続関係の法規に精通していること
- ③ 費用が抑えられる可能性があること
です。
例えば、司法書士や行政書士は、既に当事者間で内容が決まっていることについて書面を作成することはできますが、争いがある相続事件を扱うことは法律で禁止されています。同様に、相続人間の交渉の代理人となったり、家庭裁判所の手続きを行うこともできません。また、銀行等が提供する「遺産整理等」のサービスは、「行政書士事務所や司法書士事務所と連携しながら銀行が代行します」等とされ、最低手数料が100万円~などと説明されていることが多いようです。相続手続き以外のサービスが附帯されている可能性はありますが、相続手続き自体は、専門家に直接依頼した方が費用が抑えられる可能性が高いと考えられます。