相続についての手続きは一生のうちに何度もある手続きではありませんが、相続を巡り親族間で争いの起こることが少なくありません。亡くなった後の財産を巡る紛争を未然に防止するため、また、生涯をかけて築いてきた財産を最も有効・有意義に活用してもらうため、生前の元気なうちに、相続についての対策を取っておこうとする傾向が高まっています。
相続が発生する前に行っておく対策・手続きとして、遺言、生前贈与、家族信託および事業譲渡があります。相続の生前対策については、正しい知識を得たうえで適切に対応することが必要です。
遺言
「遺言」は、自分が生涯をかけて築き、守ってきた大切な財産を誰に何を残したいのか、最終の意思表示をするものです。
世の中では、遺言がないために相続をめぐり親族間で争いの起こることが少なくありません。遺言書があれば、原則としてその内容のとおりに遺産を分割されることになりますので、相続人間の争いが起こりにくくなるといえます。
遺言には、
- ① 公正証書遺言
- ② 自筆証書遺言
- ③ 秘密証書遺言
の3種類があります。遺言者の意思を確実に実現させるため、厳格な方式が定められており、その方式に従わない遺言は無効となります。
詳細については、「遺言書を書きたい」をご確認ください。
生前贈与
「生前贈与」は、亡くなる前に財産を渡すことをいいます。
遺言も、財産を誰かに渡すときに利用されますが、遺言は、遺言を残した方が亡くなって初めて効力が発生するのに対し、生前贈与は、生存中に効力が発生します。
遺言を残すのがよいか、生前贈与をするのがよいかというのは、事情によって使い分ける必要があります。
詳細については「相続税について知りたい」をご確認ください。
家族信託
「家族信託」は、資産を持つ方が、特定の目的に従って、その保有する不動産・預貯金等の資産を信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せる仕組みです。例えば、自分の預金を家族に託し、老後の生活・介護等に必要な資金の管理や給付をしてもらう場合などに利用されます。
家族信託は、家族・親族に管理を託すため、高額な報酬は発生せず、誰にでも気軽に利用できる仕組みとなっています。
詳細については、「民事信託制度の活用」をご確認ください。
事業承継
「事業承継」は、会社の経営権を現経営者から後継者へ事業を引き継がせることをいいます。中小企業・小規模事業者の経営者の高齢化が進んでおり、事業・会社の引継ぎは重要な経営課題となっています。事業承継には十分な準備期間を設けることが重要であり、現経営者が健在なうちに事業承継を進められるように準備を進めておく必要があるといえます。
事業承継については、円滑化法に基づく認定のもと、会社や個人事業の後継者が取得した一定の資産について、贈与税や相続税の納税を猶予する「事業承継税制」という制度があります。
詳細は、「事業承継をしたい」をご確認ください。