- 父が亡くなりました。遺産の受け取り方を選択することができるのでしょうか。
- 遺産を受け取りたくないのですが、どうすればいいのでしょうか。
- プラスの財産よりもマイナスの財産(負債)の方が大きいかもしれないときは、どうすればいいのでしょうか。
相続の単純承認、相続放棄、限定承認
相続が開始した場合、相続人は、
のうちのいずれかを選択することができます。
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、単純承認、限定承認または相続放棄をしなければならないとされています(民法915条1項本文)。
単純承認
相続人が被相続人(亡くなった方)の土地の所有権や預貯金等の権利や借金等の義務をすべて受け継ぐことを、単純承認といいます(民法920条)。
単純承認をした相続人は、被相続人の財産上の地位を受け継ぎ、プラスの財産だけなく、借金などのマイナスの財産も相続することになります。
相続財産を処分した場合や、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に限定承認または相続放棄をしない場合などでは、単純承認をしたものとみなされます。
相続放棄
相続人が被相続人(亡くなった方)の土地の所有権や預貯金等の権利や借金等の義務を一切受け継がないことを、相続放棄といいます(民法938条)。
実務では、被相続人のマイナスの財産(負債)がプラスの財産を上回る場合に、相続放棄がなされることがあります。また、相続人のマイナスの財産(負債)がプラスの財産を下回る場合でも、被相続人と面識がない、没交渉であった等の理由で、相続放棄がなされることもあります。
相続放棄をするには、相続放棄する旨を家庭裁判所に申述する必要があります。相続人が複数いる場合、相続人が共同で行う必要はなく、個々の相続人が独立して相続放棄の申述をすることができます。相続放棄の申述は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に行わなければなりません。
この3か月の期間のことを熟慮期間といいます。相続人が、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に相続財産の状況を調査してもなお、相続を承認するか放棄するかを判断する資料が得られない場合は、相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てにより、家庭裁判所はその期間を伸ばすことができます。
相続放棄の申述には、
- 相続放棄の申述書
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申述人(相続放棄する人)の戸籍謄本
- 相続人と被相続人の相続関係が分かる戸籍謄本一式
を取り揃えて、家庭裁判所に提出する必要があります。住民票除票、戸籍附票、戸籍謄本は、本籍地を管轄する市役所や区役所で取得することができます。
限定承認
相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ、被相続人の債務等を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができます(民法922条)。これを限定承認といいます。被相続人の債務がどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もある場合などに、相続人が相続によって得た財産の限度で、被相続人の債務の負担を受け継ぐための制度です。
限定承認をするには、限定承認する旨を家庭裁判所に申述する必要があります。相続人が複数いる場合、相続人全員が共同で行う必要がある点で注意が必要です。限定承認の申述は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に行わなければならないこと、3か月以内に相続財産の状況を調査してもなお、相続を承認するか放棄するかを判断する資料が得られない場合には、相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てにより、家庭裁判所はその期間を伸ばすことができることは、相続放棄と同様です。